最近いくつか話題になった記事もあり、にわかに Gather というツールが注目されているなとお思いの方も多いのではないでしょうか。
ドット絵だからこそリアルオフィスに迫れる。バーチャルオフィスGatherの他にないメリットと最初の始め方
弊社もそれらの記事を見て始めてみようと思い立ち、使ってみたらめちゃくちゃよかったので、ぜひ Gather の素晴らしさを伝えたいと思い筆を取った次第です。
あーはいはい。IT系の人たちが好きなやつでしょ?
今までもSlackだとかZoomだとかをうまく使いこなして、リモートで仕事できていた若い人たちが、新しいツールを見つけてキャッキャしてるんでしょ?また一過性で終わるよ。…そう思っている方もまた、多いのではないでしょうか。
しかし、そうではない!今までうまくいっていなかったチームこそ、Gatherは全てを変える可能性がある!という話をしたいのです。このツール、ドット絵な見た目のチャラさに反して、実務で使えるカンどころをよくわかっているのです。
ツールとしては揃ってるから、いつでもテレワークに移行できる。そう思っていた時期も、ありました。
そもそも、弊社は世間で言うところのいわゆるIT系の会社です。コロナ禍が始まる前から業務連絡はチャット。文書管理はクラウド。テレビ会議は当たり前。リモート勤務の社員もいました。それでも、多くのスタッフはオフィスに出勤していました。そんな当たり前がコロナ禍で激変してしまったのです。
それでも、コロナ禍が始まってからZoomを使い始めたりSlackを導入したりしているわけじゃないのだから、ツールとしては必要なものが揃っているし、十分に慣れている。明日からテレワークに移行しても問題ないと思っていました。
もちろん、意味もなくオフィスに出社していたつもりはありません。弊社は受託開発の会社ですが、コミュニケーションは主に「口頭コミュニケーション」「チャットツール」「タスク管理ツール」の3つのレイヤーで成り立っています。
これらは、コミュニケーションの速度と記録性から使い分けをしています。
口頭コミュニケーションは最速ですが、記録が残らないと言うデメリットがあります。
タスク管理ツールは長期に記録が残りますが、やり取りの速度は遅くなります。
適度にコミュニケーション速度が早く、それなりに記録もさかのぼりやすいツールとして、チャットが口頭コミュニケーションとタスク管理ツールの間を埋めていると言う形です。
この口頭コミュニケーションがテレワークではできなくなるため、スタッフ全員がオンライン会議ツールのGoogle Meetに常時接続すると言う対策を採用しました。弊社ではコロナ禍の以前から地方に住んでリモートワークをしているメンバーがおり、オフィスのテレビに常時テレビ会議画面を映し、リモートワークのメンバーにはその会議に常時接続してもらっていました。オフィスがなくなっても、この仕組みを継続するのは、弊社にとって自然なことでした。しかし、その結果、これまで目をつぶっていた事実に気づいてしまったのです。
テレビ会議はあくまで会議ツールであり、出社の代わりにはならない。
と言うことに…。全員に声が届く状態なのだから、形としてはオフィスにいる時と同じはずです。しかし、確実に話しかけづらい。居心地が悪い。使いづらい。それには様々な原因がありました。
誰か一人に話しかけたくても、チーム全員に声が届いてしまう。
確かに全員に声が届くのは便利ですが、逆に集中して作業している人に迷惑になったら申し訳ないとも思ってしまいますよね。その申し訳なさを乗り越えて呼びかけたのに、画面の向こうに相手がいなかった時の気まずさと言ったら…。もうその日の仕事は終わろうかなと思っちゃいますよね!
もちろん、オンライン会議ツールもそう言った事情があることを認識しているのでしょう。個別に話したいときにブレイクアウトルームが作れる機能も普及してきました。しかしこれが実に面倒くさい。
カメラオンは居心地が悪い。
オンライン会議ツールは、あくまでリアルの会議を代替するものです。目線も、机に対面で座って話しているように正面です。しかし、オフィスで立ち話をするときに目と目を合わせて向かい合って話すことなんてあまりありません。目を見て話すことは大事とよく言われますが、わざわざ大事と言われるからには、目を見て話すのは疲れるし、身構えてしまうものだと言うことです。
それにそもそも、プライベート空間である自室が画面に映り込むのも嫌ですよね。そういった事情を解決するために、背景をぼやかす機能や、SnapCameraのように顔を加工するツールもありますが、今度はマシン負荷が高すぎるという問題があります。誰しも常時ファンが全開のマシンで仕事はしたくない。結果どうなるかというと、全員カメラオフのテレビ会議画面のできあがりです。
顔が見えないオンライン会議は辛い。
これは人間の生理的なものだと思いますが、自分が話しているときに話している相手からの反応がないととてもつらいものです。聞いてるのか聞いてないのかもわからないと、人は早々に心が折れます。しかし、前述の理由で顔出しはあまりしたくないし、下手に相槌を打つと相手の音声がミュートになって大事なところが聞こえない。非常に高度な相槌のタイミング管理が求められるのです。
このように、おそらくリモートのメンバーはコロナ禍の前からとっくに気づいていたであろう様々な問題に、全員が直面することになったわけです。全員が常時接続のはずのGoogle Meetに映るアイコンもひとつふたつと減っていき、朝礼以外ではほぼ無音の過疎ったオンライン会議にただインターネット回線を浪費する日々…。なんとかしなければと、雑談専用の音を出してもいい別の音声通話を立ち上げたり、画面共有で Gartic Phone をやってみたり…。全ての打開策が泡のように立ち消え、オフィスに戻れる日が帰ってくることもなく、コロナ禍はついに第6波になっていました。
そんなオフィスがなくなったつらさを、Gatherが解決するかもしれない。
と言うことで、いよいよ本題です。そもそもGatherって何でしょうか?ひとことで言うと、「口頭コミュニケーションのためのツール」と言ってよいと思います。そして、この記事で書いたオンライン会議ツールの問題の全てが解消されているのが大きなポイントです!
誰かひとりに話しかけられる。
Gatherのぱっと見の特徴でもある、ドット絵で描かれた2次元空間上を、アバターで歩き回ることができます。他の人に話しかけたいときは、単に近づくだけです。近づくことで相手に声が届き、離れると声が届かないという仕組みなので、全員に声が届くと言うことがありません!
もちろん、個別に話したいと言うだけなら、オンライン会議でも二人だけの会議URLを発行したり、ブレイクアウトルームを作れば不可能ではありません。しかし、二次元空間を移動するだけというのは圧倒的な手軽さです。
また、時には話したい相手がGatherを開いているタブから離れていて、非アクティブになっていることもあるでしょう。声をかければいるのかもしれませんが、ひょっとしたらトイレやコーヒーブレイクでいないのかもしれません。そんな時のためにチャイムボタンがあるのがめちゃくちゃ推しポイントです!
チャイムを押せば呼び出し音が鳴ります。「○○さ〜ん?いる〜?」(シーン…)「いないかぁ〜」(シーン…)の時の心理的ダメージを負わなくてすみます。
カメラオフでも全然つらくない。
そもそも相手の顔が見えないと嫌だなと思うのは、そうしないと相手からのフィードバックが感じられないからでした。しかし、フィードバックがないならないなりに、それを脳が納得すれば実は問題なかったのです。そのために、テレビゲーム風のビジュアルというのは革新的かつ、最重要なポイントではないかと思っています。
話している相手から直接対面している時ほどのフィードバックがなくても、目に映っているのがゲームの世界であれば、相手のアバターが踊ったり、絵文字を吹き出しに表示したりという程度の解像度の低いフィードバックで全然納得できちゃいます。これは本当に不思議な体験ですが、ゲームに感情移入した体験を持っている世代の方にはきっと伝わるんじゃないかなと思います。
これは、いわゆるSNSの実名アカウントのような顔写真のアバター画像でもダメだと思います。顔が見えちゃうと、とたんに表情が変わらないのが空虚に感じてしまいます。好き嫌いはあると思いますが、個人的には記号化されていることこそが実は重要なんだと考えています。
Gather が競合ツールと比べても良いと思うところ
そんなオンライン会議ツール常時接続のつらさから解放してくれたGatherですが、他にも既に似たようなツールはいくつも世に出ています。それら競合と比べてもGatherの良いなと思うところを紹介させてください。
キーボード操作が楽。
Gatherでのマップ移動は、十字キー、またはWASDキーで行います。これは一見、単にゲームらしさの演出の一環のようですが、長いゲームの歴史の中で生き残っている移動方法にはやはり意味があるのでしょう。もちろん好みは分かれると思いますが、個人的には繊細なマウス操作を要求されるより遥かにありがたいです。
声の届く範囲が自然。
近づくことで声が聞こえるというコンセプトのツールはいろいろありますが、Gatherはそれらと比較しても声の届く範囲が直感的です。まずドット絵だからこそ、声の届く範囲を「マップの何マス分」と把握できるので、聞こえていると思っていたけど実は相手が聞こえるか聞こえないかの微妙な境界線にいて、聞こえていなかった、と言うことがありません。
また、自分の声の届く範囲に方向性がなく、単に自キャラの周囲に声が届くのがとても良いです。方向性がないからこそ、会話中に話している人の方を向いたりと言うさりげないリアクションが気軽にできますし、アバターの向きの調整のために繊細なマウス操作が要求されることもありません。
また、プライベートエリアという、あらかじめ設定した範囲にいる人の声は、距離に関係なく共有され、エリア外にいる人には声が届かないという機能があります。これは二次元マップ上の会議室に設定されていることが多いのですが、リアル世界でも壁に囲まれた会議室の中では距離や顔の向きに関係なく声は聞こえますし、壁の外には聞こえないですよね。
誰かがしゃべってることが分かる。
声が聞こえない範囲にいる人でも、発言している時はアバターの上に吹き出しが表示されるようになっています。このおかげで、あの二人なんかしゃべってるな〜話に混ざろっかな?と言うモチベーションにつながります。他のツールだと、近くにいたりハブに繋いでいて一見会話をしている風で、実は喋ってなかった、と言うこともあり心が折れるので、とても気に入っている機能です。
自分がそこにいる気分になれる。
オフィスを模した絵の上に自分の顔写真が載っていても、ぶっちゃけた話、そのオフィスに自分がいるんだ、と言う気分にはなりようがありません。ではどうすれば二次元の画面が自分の居場所のように感じられるほど愛着を持てるのでしょうか。その答えがカスタマイズだと思います。自分の机に自分が選んだ小物を置ける。それだけの単純なことで、急にここが自分の席なんだ!と言う気持ちになります。弊社ではマップのカスタマイズ機能をメンバー全員に解放しており、全員が好きなようにオフィスを改造できるようにしています。思い思いに自分の居心地の良いスペースを作り上げているのでカオスですが、どんどん好きに改装を楽しんでほしいと思っています。まぁ、あまりに酒瓶が転がっていたら片付けたりはしますが…
Google Calendar 連携が神。
いくら素晴らしいコミュニケーションツールでも、話す時以外にも訪れる理由がないと廃れてしまいます。Gather には Google Calendar 連携機能があり、自分の予定を確認するついでにGatherのタブを開くと言うルーティンを作ることができます。予定を確認しにGatherに行ったら、誰かがうろうろしていて、何だろうなと思って話しかけたりもできますし、Gatherに来客が来てるのに気づいたりもします。
そうそう、Gather導入してまだ2週間ですが、打ち合わせにも徐々にGatherを導入し始めています。Gather内のミーティングルームのURLも発行でき、Google Calendarに連携できるので、Gather内での打ち合わせの設定もとてもスムーズです。
自動ミュート機能が神。
オンライン会議ツールの不便なところとして、ミュートのオンオフが面倒ということを感じていませんか?
「○○さ〜ん?ミュートで話してませんか〜?」「すいません、ミュート解除してませんでした」
テレワークをしていれば毎日のようにあるやりとりですよね。
Gatherには開いているブラウザのタブが非アクティブの時は自動的にミュートになる機能がありますので、個人的な使い方としてはいちいち手動でミュートにはせず、マイクオンのまま使っています。こうすると、呼びかけられた時にGatherのタブを開くと、また自動でミュートが解除され、ストレスなく会話を開始することができます。
Gatherを始める方に伝えたい基本知識
ここまでGatherの押しポイントを紹介してきましたが、いかがでしょうか。使ってみたくなりましたでしょうか?実は弊社でもまだ導入して2週間しか経っていないため、まだまだ今後どうなるかは分からないのですが、個人的には大きな可能性を感じています。もしこの記事を読んだ方にもそう思っていただけたなら、とても嬉しいです。最後に、これから導入してみようという方に、Gatherの始め方についてご紹介しようと思います。
まず最初に公式サイトからアカウントを登録しましょう。Google Calendar連携を使いこなすには、Googleアカウントで登録することをお勧めします。
ブラウザでの動作にあまり不満はありませんが、もし重いなと感じる方は、公式のトラブルシューティングチェックリストを参考にグラフィック画質を落としたりしてみてください。
https://support.gather.town/help/troubleshooting-checklist
設定 > Space > User Roles 画面から、参加メンバーの権限の設定ができます。カスタマイズしてなんぼだと思いますので、メンバーにBuilder権限をどんどんつけましょう!
最後に、スペースをカスタマイズする際のオブジェクトの概念について。Gatherでは、家具や小物をマップ上に配置できます。しかし、最初に戸惑ったのですが、これらのオブジェクトは基本的には「ただの絵」です。特定の機能を持っているように見えても、絵です。なので、テレビの絵に近づくとYouTubeが再生されるような機能を付加できるのですが、別に観葉植物にも同じ機能を付加することができます。ただし、キャンプファイヤーや噴水など、近づくと環境音がするオブジェクトが一部にあり、それらだけは例外です。設定なしに近づくと音が鳴ります。
また、壁が通り抜けられなかったり、会議室の中で音声が共有できたりするのはタイルエフェクト(Tile Effects)というオブジェクトとは別の機能になります。通り抜けられなさそうな絵を置いてもタイルエフェクトでImpassibleを設定しないと通り抜けられますし、逆に壁になっている絵を取り除いても、タイルエフェクトが残っている限りは通り抜けができません。この概念を知っているとすぐにマップのカスタマイズを楽しめると思います!
それでは、Gatherで良いバーチャルオフィスライフを!