弊社では、面接で適正ありと判断した方は、業界経験が浅くても制作ディレクターとして採用させていただいています。ウェブディレクターとして入社された方は、まず先輩ディレクターのアシスタントとして打ち合わせに参加し、議事録を取るところから業務に入ってもらいます。
しかし、そもそも議事録とは何を記録するものなのかが分からない、という疑問もあるかと思います。そこで、この記事では議事録を取るときのポイントや心構えをまとめてみたいと思います。
社内向けの性格が強い記事ですが、共有することで同じようなお仕事をされている方の参考になるかと思い公開しています。あくまで、B2Bでクライアントから依頼を受けてウェブサイトを制作・開発する弊社のやり方ですので、全ての業種・会社で共通のものではないことをお断りしておきます。
議事録に取るべき内容
まず、ここでいう議事録は社内向けの記録として取る議事録になります。お客様に提出する議事録というものも別途存在しますが、機会を改めて注意点をご紹介できればと思います。
開催日時・場所
この基本情報は必須です。どんな打ち合わせの議事録でも記載しましょう。
記録者
誰が議事録を取ったのか、ですが、弊社では議事録の記入から保存まで Google Document で行いますので、自動的に記録が残りますから、議事録からは割愛しても構いません。
出席者
打ち合わせに参加した方の情報です。自社の参加者も必ず記録します。
B2Bの打ち合わせの場合はたいてい名刺をいただけますので、氏名や所属などはあとで名刺から書き写せば問題ありません。
名刺に書いていない情報を議事録に残す必要があります。
- このプロジェクトにどう言う関わり方をするのか
- 決裁権があるのはクライアント社内の中でどなたなのか
- クライアント社内でどなたの意思が最も強くプロジェクトに影響するのか(たいていはプロジェクト推進のご担当者が決まっていますが、決まっていなかったり、影の決定権者がいることも)
- 容姿
初回のお打ち合わせとなるキックオフミーティングでは、参加者が多い場合は大変になりますが、これらの情報をできるだけ細かく残すと良いでしょう。
これらの情報は、キックオフ以降にプロジェクトに入り、途中の打ち合わせにだけ参加する社内メンバーの役に立ちます。また、容姿をメモっておくのは意外かもしれませんが、キックオフ以降あまり打ち合わせに参加されない方と半年後に再開した時など、顔とお名前が一致しないこともありますから、自分の役にも立ちます。
2回目以降の打ち合わせも、新しくお会いした方が打ち合わせに参加されたら、同じことをメモっておきましょう。
今回の議題
今回何のために打ち合わせの機会が持たれたかです。後から議事録を読み返す際に、これがきちんと書いてあると探しやすいです。ないと全部読まないと何の打ち合わせだったのかが分かりません。
プロジェクトが立ち上がった背景
キックオフミーティングで必要になる記録です。多くの場合口頭で説明されますが、プロジェクト全体に関わる非常に重要な情報なので、必ず記録にとりましょう。お話がない場合はこちらから質問します。
プロジェクト計画書をまとめプロジェクト背景まできちんと文書化して提供していただける会社は、残念ながら上場企業でも少数派です…。
プロジェクトの現況
こちらもキックオフミーティングで取るべき記録です。情報収集段階なのか、実施年度・時期もある程度確定しているのか、すでに要件定義が完了しているのか、設計も開始しているのか、実施が進んでいて想定外のトラブルの収拾に呼ばれたのか…といった情報です。
この情報が打ち合わせ後の動きのスピード感に関わります。
プロジェクトの課題と目的
引き続きキックオフミーティングで必要な記録です。
- 何が解消されればプロジェクトが成功と言えるのか?
- 何が達成されればプロジェクトが成功と言えるのか?
例:
- 「サイトの更新にコストがかかっているのでCMSを導入してコストを削減したい」
- 「新しいサービス立ち上げに伴うプロモーションサイトを制作し、オンラインで申し込みが完了できる状態にしたい」
要件
目的を達成するためにクリアしたい具体的な小課題が要件です。弊社では主にCMSに必要としている機能の話になります。
お見積もりを提出する際に必要になる情報です。キックオフ時にまとまっていなければ、2回目以降のお打ち合わせはお見積もりを提出するまでこの要件を固めていく作業が主になります。
非機能要件
ダウンタイムを1時間以内に抑えたい、月間1000万PVを想定したい、など、その名の通り機能ではない要件です。インフラ構築も業務範囲に含まれる場合は、非機能要件もヒアリングし記録に残します。
ご要望・相談事項
打ち合わせの主な部分になります。お客様の実現したいご要望についてうかがい、シンプルにまとめます。
また、お客様社内で調整中で、まだご要望とは言えない段階の事柄は、相談事項としてお話があります。要望なのか、まだ相談中の事項なのかは、できれば議事録の中でも区別ができるようになっていると良いでしょう。
提案内容
開発会社にとって打ち合わせは基本的にヒアリング。議事録の大半はお客様の発言になります。
そんな議事録の中で、こちらから発言・提案したことは混ざらないように分けてメモっておく必要があります。
いわゆる「言った・言わない」問題はよくあるトラブルですから、重要な記録になります。できれば、お客様の反応もよく見てメモしましょう(好感触、渋い反応、など)。
なお、お客様の他に、コンサルタントや代理店など、別の会社も打ち合わせに参加している際は、その会社の発言かどうかもわかるようにしましょう。
決まった議題と今後に持ち越しになった議題
議題の中で、どれが方針が決まったもので、どれが結論が出ず次回以降に持ち越しになったか、です。うやむやのまま話が進んでしまった場合、打ち合わせ終了の前に念のためお客様に確認し議事録でも分かるようにしておきましょう。
宿題と期限
お打ち合わせの中で、こちらのタスクとして持ち帰りになった内容を記録に残しましょう。これを忘れると非常に失礼です。
その他
- 次回開催日時
- コミュニケーション方法(メールなのか、Backlogなのか、チャットツールなのか)
- 商流(複数社が関わる場合の、受発注の関係)
心構え
全ての発言の発言者と発言内容を記録に取るのは物理的に無理ですし、それを目指す必要はありません。むしろ、上記で紹介したような、特に重要なことがらに絞って記録を残す方が良いでしょう。
そして、記録だけに集中せず、場の空気や参加者の表情など、その場にいないと分からないことに注意を向けましょう。録音さえすれば文字起こしはどんどんAIでもできる時代になっていきますが、その場にいたひとりの人間として感じることはAIにはできません。打ち合わせ自体を楽しむくらいの心構えで、リラックスして臨みましょう。
複数社が関わる大きなプロジェクトでは、責任や分担の分界点も複雑になります。その場で把握していくのは大変ですが、プロジェクトを円滑に進めるためにも、責任分担に関わる話題は耳を立てて記録しておきましょう。
まとめ
いかがでしょうか。ウェブ制作現場の打ち合わせの雰囲気がつかめたでしょうか。
以前私がイベントで登壇した時に、会場からのご質問にお答えする際、「打ち合わせは楽しい」というお話をしたことがあります。お客様のご要望に適切に応えられた際の喜びは、この仕事をしていてよかったと思える原動力です
もちろん、我々の力不足でうまくお応えできず歯がゆい思いをすることもあります。もっとお客様にご満足できる体制を作れるように、お力を貸していただける仲間は随時募集しています。また、お仕事も随時ご相談に乗ります!
ここまでお読みいただきありがとうございました。